オリーブ第3号 (2007年10月1日)

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運動不足と動物性脂肪の摂りすぎに気をつけましょう

 歴史的な猛暑を記録した夏も過ぎ、やっと過ごしやすい季節が巡ってきました。と書き始めたところが、9月後半になって史上最も遅く猛暑日を記録したというニュース。毎年のことながら異常気象には驚かされ、季節の挨拶をどう書いたらよいものやら悩まされます。このオリーブ第3号をお読みいただいている頃には、さすがに食欲の秋本番を迎えていることと思いますが、楽しみな半面食べすぎが心配という方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は生活習慣病と食べ過ぎ、運動不足、肥満などについて考えてみましょう。

生活習慣病増加の真犯人は?

日本では昭和の高度成長期以降に、糖尿病をはじめとする生活習慣病が激増しました。これは、生活が豊かになって食べ過ぎ(カロリーの過剰摂取)が増えたためと、一般的には考えられがちです。しかし、右のグラフを見てください。1950年以降糖尿病は著しく増加していますが、日本人のカロリー摂取量はあまり増えておらず、1970年代をピークにむしろ減っているのです。一方、糖尿病の増加に比例して増えているのが、車の保有台数と脂質摂取量です。

炭水化物の減少と動物性脂肪の増加

右下の表は、いろんな時代の日本人の栄養摂取量を比較したものですが、平安時代や江戸時代と比較しても現代人の摂取カロリーは案外多くありません。昭和30年以前と平成10年を比べると、炭水化物が減って獣肉由来の脂肪(動物性脂肪)が著しく増えていることがわかります。それにしても、縄文時代や平安時代の人って、けっこうカロリーを摂っていたんですね。もっとも、現代人と比べると運動で消費する量が全然違うのでしょうけれど。

日本人の約半数が脂肪の摂りすぎ

日本人では脂肪摂取量は、摂取カロリーの25%以下に抑えることが望ましいとされています。しかし、厚生労働省の調査では、男性の40%、女性の50%が脂肪の摂り過ぎになっています。

若年者に目立つ運動不足

また、その下のグラフは厚生労働省が発表している統計から、運動する習慣がある人(1回30分以上の運動を週2日以上実施し、1年以上継続している人)の割合を表したものです。運動習慣のある人の割合がかなり少なく、特に20代から40代にかけての運動不足が目立ちます。

これらの調査結果を総合すると、糖尿病などの生活習慣病が増えた原因として、食生活での動物性脂肪摂取量の増加、そして自動車社会に代表される運動不足が大きくかかわっていることが推測されます。

内臓脂肪と皮下脂肪

ぜい肉を意識して横腹のお肉をつまんでみたことはありませんか。このように、指でつまめる脂肪は皮下脂肪です。それに対して、最近よく問題にされる内臓脂肪は腹筋の内側にあり、おなかを外から触っても実感することはできません。これをおなかの断層写真(CT)で見ると、下の図のようになっています。模式図で黄色の部分が皮下脂肪、赤の部分が内臓脂肪です。皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満(内臓肥満)のCTを並べてみると、脂肪のつき方の違いがはっきりお分かり頂けると思います。内臓脂肪の量を測るには、このようにCT画像における断面積で評価するのが正しい方法で、内臓脂肪の面積が100cm2を超えたら、動脈硬化をおこしやすい危険信号です。

メタボリック症候群

メタボリック症候群の診断基準(注1)ではお臍のレベルでウエストを測って、男性85cm、女性90cmを超えたら内臓肥満と判断することになっており、これはかなり不正確な方法ですが、どこでも簡便に測れるようにこの方法が採用されました。(注2)

内臓肥満になると、「インスリン抵抗性」という状態に陥りやすくなり、インスリン抵抗性は、糖尿病、高血圧、高脂血症などの原因となります。これらの病気はたとえ一つ一つが軽症にみえても、複数重なると動脈硬化が想像以上に進みやすくなるため、注意が必要です。このような考え方からメタボリック症候群という病名がつけられ、注意が喚起されています。

生活習慣から動脈硬化予防を

動脈硬化は気づかぬうちに進行し、脳卒中や心臓病などをひき起こしてしまいます。「メタボリック症候群」や「内臓肥満」といわれたことがある方、あるいは、はっきりと診断されていなくてもなんとなく心当たりがあるという方は、動脈硬化が進まないうちに生活習慣の改善を心がけましょう。

悪いイメージの内臓脂肪ですが、適度の脂肪はエネルギーの貯蓄として身体に必要です。蓄えとしてみると内臓脂肪は貯まりやすく減りやすい、皮下脂肪はたまりにくいが一旦貯まると減りにくい性質があり、内臓脂肪は普通預金、皮下脂肪は定期預金にたとえられます。ということは、生活習慣を改善して少し体重が減り始めたら、まず内臓脂肪が減っているはずですので、努力は案外報われやすいのです。

メタボリック症候群を気にしながらも努力を始める前からくじけている人が少なくありませんが、少しの減量でも効果は期待できますので、難しく考えて身構える必要はありません。何かひとつでも体に良い習慣をはじめましょう。動物性脂肪を減らす、今より少しだけ体を動かす、などいかがでしょうか。

(院長 鍵本伸二)

(注1)腹囲(お臍のまわり)が男性85cm以上、女性90cm以上の人で次の3つのうち2つ以上を満たす場合、メタボリックシンドロームと診断。(1)血圧130/85mmHg以上(どちらかでも) (2)中性脂肪150mg/dl以上又はHDLコレステロール40mg/dl未満 (3)空腹時血糖値110mg/dl以上

(注2)かぎもとクリニックでは、より正確に内臓脂肪を測定するために特殊なマルチ周波数体組成計を採用して、内臓脂肪断面積を測定しています